箱モノでなく、人材を活用して地方創生へ

前編で地方創生を補助金ビジネスとして、未だに箱モノづくりにしか目が向かない旧態依然とした行政を批判した。以前なら工場を誘致し、製造業を地方の産業として根付かせ、生産年齢人口(15~64歳人口)を増やすという方策もあり得たが、今や製造業ではロボットが活躍する時代。工場を誘致しても雇用はほとんど増えない。

そうしたなか、注目すべきは地産地消の特産品や観光で、地域内経済循環を拡大させ、で人口減少をくい止めた事例だろう。有名なのは隠岐の島・海士町だ。

ここ3年間で、製造業の雄・豊田市で生産年齢人口が3%減少しているのに対し、島根県海士町では2%増加している。人口規模はまったく違うにせよ、ベクトルの向きに注目して欲しい。国際的なモノづくりよりも、特産品や観光の方が人口を増やす効果がある時代だ。

北海道ニセコ町にも注目だ。地方創生ブームのはるか前から観光をテコにした地域振興に取り組んできた。海外からの観光客、とりわけオーストラリア人のリピーターが多く、昨今話題のインバウンド振興を先駆けた地域でもある。あまりメディアでも話題にならなかったが、昨年の公示地価上昇率は日本一。それもそのはず人口推移を見ても、子ども、生産年齢人口、転出入超過はいずれもプラスで、生産年齢人口も海士町と同じくここ3年間で3%アップとなっている。

こうした地方の成功事例を見るときに重要なのは、産業の芽をいかに見出すかということ。海士町には特産品に注目した人材がいて、ニセコ町には海外からの観光客に目をつけた人材がいた。その意味で私が注目しているのは、地方創生の前からある制度「地域おこし協力隊」である。

国や自治体が3年任期の準公務員扱いで人材を派遣するというもので、確率でいえば10人派遣したうち2~3人は、地域振興に役立つ産業の芽を見出している。彼らの人件費の何百倍もかけてあまり利用されないハコモノを造るより、はるかに地域に役立っている。