「移住女子」受け入れで花開く

最近、面白いなと思っているのは、新潟県の南部の豪雪地帯の「移住女子」。棚田しかないところに移住してきた、都会出身の大卒20代の女性の集まりである。彼女たちは、もともと行政主催の「お試し農村体験」などを試し、関心を高めてから「地域おこし協力隊」に応募し、山村の食文化などの豊かさに魅せられ移住してきた。今ではネットワークをつくり、雑誌を発刊、農業の傍ら特産品販売を活性化するコンサルティングなども手掛けている。

ひと昔前なら、「何しに来た」と拒絶されるところ、地元で結婚して、集落に溶け込みながら活動を続けているメンバーも多い。山村も21世紀にあった体質に変わりつつあるのだ。「移住女子」はIT能力やマーケティング能力も高く、移住の前は海外関係の仕事をしていた人も多い。受け入れ側にもメリットがあるし、彼女たちにとっても、大企業でOLやってお茶くみさせられ、ガラスの天井にぶち当たって、セクハラオヤジの相手をしているより、はるかにイキイキくらせるって話だ。

地方創生は、マクロ的に総括するなら、まだまだ旧来の行政のしがらみにとらわれて補助金行政の二の舞になっているところが多いだろう。しかしミクロの観点で地方を訪れると、大企業のノウハウに捉われずに活路を見出した豊田市の2つの企業や、生産年齢人口を増やし続ける海士町、ニセコ町、さらに豪雪地帯の山村を活気づける「移住女子」のような、東京ではまず出会えない輝く存在にも出合える。現場にこそ地方創生を成功させるヒントがある。

藻谷浩介(もたに・こうすけ)
日本総合研究所調査部主席研究員。1964年、山口県生まれ。88年東京大学法学部を卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。以来、日本全国の市区町村をくまなく回り年間500回以上の講演をこなす地域エコノミストとして活動している。94年、米コロンビア大学大学院ビジネススクール修了。2011年より日本総合研究所に転じて現職。日本政策投資銀行地域企画部特別顧問、NPO法人地域経営支援ネットワークComPus理事長などを兼務する。著書に『実測! ニッポンの地域力』『デフレの正体』『里山資本主義』(共著)『和の国富論』など多数。
(高橋晴美=構成)
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