現在、掲げているスローガンは「ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ」、つまり「明日、不可欠の」。これからの社会で大切な分野である「福祉」「環境」「健康」「通信」「農業」の頭文字が「フ・カ・ケ・ツ・ノ」。これを「安全・安心」に、大和ハウス伝統の「スピード」を旨として展開するという強い意思表示が冒頭の「ア」と「ス」だ。「何をしたら儲かるか、という発想で考えてはいかん。どういう事業が、どんな商品が世の中の多くの人々に役立ち、喜んでもらえるかを考えろ」という石橋オーナーの教えがここにある。
「福祉」に関しては、1989年に立ち上げたシルバーエイジ研究所が重要な役割を果たすことになるだろう。設立当時、私は常務取締役で福祉施設の建設も請け負う立場にいた。
折しも、旧厚生省(現厚生労働省)が発表した「ゴールドプラン」によると、10年間で老人保健施設28万床が必要だという。そこにチャンスを感じた私は、ハードばかりでなくソフトを構築すれば、独自の事業として展開できるはずだと考えた。役員会に諮ると、オーナーの「必要ならやれ!」の鶴の一声で事業化が決まった。
ただし、その時点ではノウハウなど何も持っていない。石橋オーナーには「実になるまで3年は待ってください」とお願いした。しかし、そこはさすがにオーナー。2年後、私を見て「あと1年やな」と念を押された。オーナーの経営に対する執念を垣間見た一瞬だった。こうした経営の「心」を、後世に伝えていかなくてはならない。
▼樋口会長のある1日
06:00 起床
08:00 出社
08:10 腹筋等運動
08:15 創業者の遺影へ挨拶
08:20 朝の情報交換【役員談話室にて】
08:55 ラジオ体操
09:00 社内報告
10:00 来客対応
11:30 英会話(D's Speak)
12:00 昼食
12:30 ウオーキング
13:00 社内決裁・来客対応
15:00 講演
18:15 会食(お客様と)
21:30 解散
22:30 ストレッチ
23:00 就寝
1938年、兵庫県生まれ。県立尼崎高校を経て関西学院大学法学部卒。63年、大和ハウス工業に入社。常務取締役、専務取締役などを経て93年大和団地社長。2001年大和ハウスと大和団地が合併し社長。04年より会長兼CEO。