より細かく計算してみよう。250万円を年6%で3カ月間、運用した場合に得られる利息は3万7500円。これに税金が20.315%かかるので、税金は7618円。これを差し引いた手取りの利息は2万9882円になる。
一方、250万円で購入した投資信託の購入手数料が平均で2.16%(消費税込み)だとしよう。すると、購入手数料の額は5万4000円だ。
さて、両者をよく比較してもらいたい。退職金プランの定期預金部分の手取り利息は、確かに通常の定期預金に比べて高いが、投資信託の購入手数料によって、定期預金の上乗せ金利分は簡単になくなってしまうのだ。多くの銀行は「年6%」という定期預金部分の高金利を前面に打ち出して、商品の有利さをアピールしているが、実態はこの程度のものだということを、まず認識しておく必要がある。
なかにはファンドラップ(※)と組み合わせることで、投資信託部分の購入手数料がかからないようにしているケースもある。これなら定期預金の上乗せ金利部分がまるまる利益になるが、問題はファンドラップの場合、保有している期間中のコストが、通常の投資信託に比べて割高になる点だ。投資信託の運用管理費用に加えて、ラップ口座の管理手数料がかかる。銀行によって料率は異なるが、年1.5~2%程度で、これが購入した投資信託の運用管理費用に上乗せされる。
そもそも退職金運用は長期で考えるべきもの。それなのに退職金プランで運用期間を長期にすればするほど、定期預金の上乗せ金利部分の効果は薄まってしまう。
退職金プランは確かにお手軽だが、表向きの高金利につられて退職金プランを利用しても、その効果はほとんどないことを理解しておくべきだろう。
※投資一任運用サービスの一種。金融機関が個人顧客と投資一任契約を交わし、顧客に代わって投資信託を選び、組み合わせて資産運用するもの