米屋は、日持ちする玄米で保管しておき、必要な量を精米してから販売する。保管している玄米が減れば、農協などから仕入れることになる。農協は長期保存ができる殻つきの籾もみで保管し、精米店などの求めに応じて殻を取り除いた玄米にして出荷する。

このようにお米は農協、精米店、飲食店がそれぞれ籾、玄米、精米の形で保有して、在庫切れを起こさないように注意している。

ストアの考え方を私たちの仕事に応用してみよう。たとえば、顧客への提案書を作成する場合。明日訪問する顧客のために提案書をゼロから作成するのは、完全な受注生産と同じ。リードタイムはどうしても長くなってしまう。しかし、どの顧客にも当てはまる企画書の雛型を用意しておけば、どうだろうか。少しアレンジを加えるだけで、提案書があっという間に作成できるだろう。

▼トヨタ式“ムダ”時間 撲滅4つのポイント

[1]待ち時間の削減
部下に資料作成を頼んだのに、納期までに上がらず次の作業に進めない。そんなときの待ち時間をなくすためには納期の設定や作業配分を見直そう。

[2]つくりすぎの削減
製造業だけでなく、ビジネスにおいてもつくりすぎのムダは多い。たとえば会議資料。必要かどうかわからない資料をつくるのは、資源も時間もムダ。

[3]在庫の削減
オフィス内で「まだ使うかも」とあれこれ取っておくことで整理整頓ができなくなったら本末転倒。探す時間のムダだ。デスクトップ、机上も同様。

[4]「ストア」の活用
「多段階でモノを保管することで完成速度を高める」のがストア方式。ビジネスに応用すれば、よく使う書式の雛型をつくることなどだろう。

エフ・ピー・エム研究所所長、経営コンサルタント 鈴村尚久
1952年生まれ。京都大学法学部卒業後、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。経理部、第2購買部、産業車両部、生産調査部、販売店業務部、国内企画部に勤務。97年退職、99年より現職。父・喜久男氏は「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏の右腕だった。
(Top communication=構成 的野弘路、貝塚純一、太地悠平=撮影)
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