夫婦の「お金の価値観」の不一致で家庭破綻
鶴田さんは言う。
「お金は、人生をより良く生きるための道具です。お金談義は人生をより良く生きることを話し合うことです。ですから本来は怒って話すことではありません。ところが日本には『お金の話ははしたない』という考え方があり、多くの人がお金の話は苦手なようです。また、収入はその人の仕事の出来・不出来やその人の能力の対価というとらえ方もあり、『お金が足りない…』という言葉を聞いた瞬間に、あたかも自分自身を否定されたと感じてしまう危険性もあるわけです。その結果、その言葉をきっかけに、思いもよらない争いごとに発展することにもなるのでしょう」
言うまでもなく、夫婦は恋に落ち、伴侶となった間柄。鶴田さんによれば、そうした夫婦や親子など近しい関係の人ほど「同じ価値観であってほしい」という願望を無意識に抱くことも多いという。その結果、夫か妻の一方のお金の使い方(浪費など)に対して何か咎めると、言われた側は自分を否定されたと思うこともある。そんな小さな溝が、お金談義タブー化に拍車をかけるのだ。
家計は「ひとつの船」と同じだと鶴田さんは言う。
共稼ぎでそれぞれそれなりの収入があり財布は別々、ならば互いに「欲しいモノは買う」でいいのかもしれない(それによって貯金ができないこともあるが)。
しかし、共稼ぎでも世帯全体の収入がそれほど高くないなら、運命を共有する船に乗る関係。気軽に「まあ、いいか。買っていいよ」とは言いづらくなるものだ。
結局、比較的高額なモノの場合、「買うか買わないか」どうすればいいかは、夫婦でよく話し合って決めるしかない。そしてその際に大事になってくるのは、「相手の考えを尊敬するということです」(鶴田さん)。でないと、ケンカするだけで、時間と体力のムダだ。本当に不毛なだけだ。
そうやって無用な摩擦を繰り返すことで、夫婦間のギャップがどんどん大きくなり、お金談義がタブーとなると……例えば、妻はせっせとへそくりし、夫が定年退職したタイミングで離婚という結末を迎えてしまうということにもなりかねない。
第一、健全なお金談義のない家庭に、健在なマネープランや健全な老後設計もあまり望めないかもしれない。そうなれば、船は転覆するまでだ。