大阪改革は会社整理で会社再建ではない
【塩田】民進党は憲法問題について、どう考えていますか。
【馬淵】安倍政権のようなやり方は認めないと言ってきました。誤解を恐れずに言うと、私は改憲も認める立場なので、民進党の中で、憲法をどうすべきか、堂々と議論したほうがいいと思っています。ただ、岡田克也代表(元外相)は安倍政権下では議論に与しないとの方針なので、現在の岡田代表の下での憲法論議は困難でしょう。
【塩田】国会の憲法審査会などで実際に憲法問題の議論が始まると、民進党が「議論もノー」といえば、国民は民進党に背を向けるでしょう。中身の議論が必要になるのでは。
【馬淵】そうだ思いますよ。例えば地方自治を含め、統治機構など、時代の変化の中で検討すべき課題はあります。議論は行っていくべきです。
【塩田】馬淵さんは大阪の隣の奈良県の選出ですが、おおさか維新の会は、橋下徹前大阪市長が「政界引退」しました。今の体制のおおさか維新をどう見ていますか。
【馬淵】かつてのような勢いは感じません。発信力のある橋下さんがいないのは大きい。毎日、メディアに向かって発言して、取り上げられていたのに、それがなくなった。
党としての路線も、完全に与党の補完勢力です。喧嘩上手の橋下さんは、補完勢力と見せないような立ち居振る舞いで、うまくやっていた。だけど、松井一郎・大阪府知事は自民党すり寄り路線なので、補完勢力にしか見えない。
橋下さんが復活しないと、再浮上は難しいと思いますが、政治の世界は「生もの」なので、鮮度が落ちたら、あっという間に味も変わって、口に入らず、ごみ箱に入ってしまう。この世界で一度、空白をつくることの危うさを実感することになるのではないかと思います。
【塩田】おおさか維新は、大阪での改革を全国に広げる、と主張しています。
【馬淵】彼らの主張どおりになるとは思えません。彼らがやった大阪の改革は、借金があるから、それをなくすという「会社整理」で、「会社再建」ではない。弁護士の橋下さんはそういう発想になったのかもしれない。借金をなくすために資産を切り売りしてどんどん縮小していきましたが、むしろいかに再投資するか、拡大路線を取るか、それぞれの大都市が違いを見つけていかなければいけないと思います。
【塩田】民主党政権崩壊後、国民の期待感が一気に大きく消失しましたが、民進党はどうやってもう一度、期待感を生み出すか、そこが最重要課題だと思いますが。
【馬淵】本当は「良質な保守」「穏健な保守」です。これ以上、今の路線で行っても、広がりがない。われわれが政権を取ったのも、民主党と自由党の合併で小沢さんが来て、自民党の一部が入り、保守層をグッと引き寄せたのが大きかった。これができないと、民進党は政権を担うところにいかない。
ですが、自民党は崩れませんから、今、どういうやり方があるかというと、難しい。民進党の中で「新たな保守」、「リベラル保守」というメッセージを出し続けて、それを標榜する議員を増やしていく以外にない。今は左派に引っ張られ、共産党との連携でグググッと左に寄っていますが、政権を取るためには日本では「良質な保守」でないと無理です。