ニトリにとって不況は追い風であり、雇用・産業の空洞化はニトリの立場を強くしている。中小のインテリアメーカーの中には、資金繰りが厳しいところも少なくない。ニトリは手形ではなく現金で決済し、優良な取引先を手元に引き寄せている。ニトリの子会社のように機能するメーカーもあるほどだ。

ニトリのライバルはGMSといえるが、その多くは合理化の余地が限定的であり、売上総利益率が改善したといっても仕入れ値を買い叩くなど「腕力」に頼っていることも多い。しかしニトリの値下げはコスト構造を合理化した結果としてのものであり、継続性がある。

「安売り企業がデフレを悪化させている」という声もあるが、安売りを非難しても仕方がない。先を読んで消費者の需要を創造するニトリは、収益を上げることで社会貢献をしているのだ。

ニトリの慧眼は、効率化が遅れていた家具業界に目をつけたことだ。業界で初めから異端児扱いされていたニトリにとって、常識や慣習を打ち破る大胆な発想と行動が取りやすかったことも功を奏したといえる。アウトサイダーは同業者から助言や情報をもらえないかわり、誰にも遮られることなくビジネスを展開できる。その結果として不況下でも好業績を維持している。

「あと3割は値を下げられる」と豪語するニトリの快進撃は、当分やむことはなさそうだ。

(成=野崎稚恵)