少数派の低学歴層に「不利益」が集中

ベース人口を考慮して、それぞれの学歴グループの刑務所入所者出現率を計算してみましょう。

表1のカテゴリーの(2)(4)(6)を小・中卒、(7)(9)を高卒、(10)を大卒とします。この3群の刑務所入所者数を、該当する学歴人口10万人あたりの数にします。計算に使った分母の学歴人口は、2010年10月時点の数値です。同年の『国勢調査』から得ました。

表2は、結果の一覧です。学歴別の刑務所入所率の試算結果をご覧ください。

男女とも、学歴の低い群ほど刑務所入所率が高くなっています。学歴による差は男性で大きく、大卒を基準にした倍率にすると、高卒は5倍、小・中卒は32倍にもなります。義務教育だけを修了した人間が刑務所に入る確率は、高等教育修了者の32倍ということです。予想はしていましたが、ここまで大きな差があるとは……。

現代日本は、高校進学率95%超、大学進学率50%超の高学歴社会です。この社会では、小・中学校のみ修了した人は、就ける仕事が著しく限られる、低収入で働かされるなど、諸々の不利益を被るのが現実。

生活態度の不安定化レベル(犯罪へのプッシュ要因)、犯罪誘発要因や逸脱カルチャーへの接触頻度(プル要因)も相対的に高くなると思われます。こうした傾向は、社会参画の度合いが高い男性で顕著でしょう。

表2は人口全体のデータですが、若年層に限ったら、犯罪率の学歴差はもっと大きくなると推測されます。上級学校進学率の上昇により、低学歴層がますますマイノリティー化し、諸々の困難や不利益が、この層に「凝縮」される度合いが高まっているわけですから。

その様相を可視化してみましょう。