川鍋によれば、いまはこの全国タクシーを手掛ける子会社のジャパンタクシー(JapanTaxi)社長として、なんとしても陣頭指揮を執らなければならない。だから、本業であるタクシー事業の経営から少し距離を置くのもやむをえないというのである。

危機意識の背景にあるのは、タクシー業界における恐ろしいほどの環境変化だ。一つは市場の縮小、もう一つは「黒船」の来襲である。

日本のタクシー市場は、少子高齢化にともない縮小基調が続いている。業界全体の運送収入(売上高)はピーク時の約2兆7000億円(1991年度)に対して約1兆7000億円(12年度)と、37%も減ってしまった。

その一方、世界中で圧倒的な存在感を見せるのが、米国発のタクシー配車サービス「ウーバー(Uber)」である。スマートフォンのアプリでタクシーを呼ぶことができる手軽さと、利用者の評価によるドライバーの「格付け」を参照できる安心感が人気を呼んだ。10年10月の運用開始以来、世界58カ国300都市に進出し、契約するドライバーは100万人以上という。

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(上)タクシー事業の現状(下)配車サービス「Uber」の脅威

その圧倒的な人気ぶりに、ロンドンやパリなど欧州各地で地元のタクシー事業者が「反ウーバー」の大規模デモを行うといった軋轢も起きている。

タクシー事業者が反発するのは、ウーバーのドライバーが、必ずしもプロのタクシー乗務員ではないからだ。一般の人が自家用車を使って、必要とされるときだけウーバーのドライバーとしてお客を運ぶ。当然、従来のタクシー業界には打撃となる。

ただ、日本では営業許可を持たない個人や会社がタクシー事業を行うことは「白タク行為」といわれ、道路運送法で禁じられている。そのため、ウーバーも14年に日本(東京)への進出を果たしているが、いまのところは中小のタクシー・ハイヤー会社と契約して小規模に営業しているにすぎない。

とはいえ、その中でもウーバーは15年に福岡市内で運賃を取らない「ライドシェア(相乗り)」の実証実験をするなど「白タク解禁」を見越した布石を打っている。また、安倍政権が進める国家戦略特区構想の中でも、特区内で運賃をともなうライドシェアを認めようという議論が進んでいる。