資金需要を作ることが先決で、金融政策は後だ

――マイナス金利政策についてはどうですか。

その是非については正直わかりません。しかし10年債もマイナスになり、銀行の経営も厳しくなり、MMF(公社債を中心とする投資信託)も返すといわれれば、そんな社会はどうでしょう。皮肉にも金庫が売れているようですが、家にお金が置いてあるというのは、泥棒は喜ぶかもしれませんが、それは何かおかしいのではないでしょうか。欧州に何か成功例でもあればいいんでしょうが、その反応はまちまちです。デンマークはすでにいろいろなものの値段が上がり、逆にコストがかかるので市中金利も上がってしまう。スイスも長い間、ネガティブ金利(日本でいうマイナス金利のこと)をやってきましたが、これが非常に有効的に為替を守れたとか、経済を守れたということもない。正直まだわからないのではないでしょうか。

――日銀はマイナス金利で金融を緩和して市中に資金が出回るようにして、景気の活性化をしたいのだと思うのですが、狙いどおりにいきますか。

マイナス金利をつければ、当座預金からお金がでて、市場での貸し出しが増えるのかといったら、そんなことはない。需要のないところに貸し出しはないですよ。最悪の場合、マイナス金利がついているのにそのままの状態が続けば、銀行はコストばかりがかかって貸し出しができない、という状況に陥ってしまいます。一番大事なことは、資金需要を作ることが先で、金融政策は後だということです。つまり今やっていることは逆なのですよ。これは何も日本だけではなく、どの国も同じような状況にあり、中央銀行の金融政策に頼りすぎではないでしょうか。資金需要を生み出すためには、新しい技術の開発などを進めていくことが大切で、税制面での優遇などでR&Dへの積極投資ができるような政策が必要なのだと思います。

さらに最終的には公共投資などを通して需要を生み出していくことが必要です。潜在成長率が0.4%程度だと、すぐにその水準に達してしまいます。生産性の改善も何も起こらない。潜在成長率そのものを上げなければいけませんが、人口が減って、老齢化していく、そんな国でどうやって潜在成長率を上げるかというと、結局、トータル・ファクタ・プロダクティビティー(全要素生産性)、技術革新を拡大するしかないと思います。そのためには、ものすごく思い切った税制面で優遇措置をとって利益を刺戟したり、規制を行き過ぎるぐらい撤廃するという取り組みが必要です。そうすることによって、そこに大きな需要を生むしかないのではないでしょうか。

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