民間タンカーが攻撃を受けるなど、中東・ホルムズ海峡の安全確保が国際的な課題となっている。背景にあるのはイランとアメリカの関係悪化だ。日本はアメリカ主導の「有志連合」に即時参加すべきなのか。国家基本問題研究所の湯浅博氏は「日本は参加を先送りすべきではない。中東情勢の不安定化は中国に"漁夫の利"を与えることになる」という——。
パナマ船籍のタンカー「Riah」がIRGに拿捕された
写真=AFP/時事通信フォト
イスラム革命防衛隊によって、2019年7月18日に公開されたビデオより。緊迫するホルムズ海峡で、パナマ船籍のタンカー「Riah」がイスラム革命防衛隊に拿捕だほされた。

米英がエスコートして守ってくれた時代は過ぎた

中東原油に依存する日本は、アメリカ主導の「有志連合」に即時参加すべきなのか、あるいは海上自衛隊が単独で日本艦船を守るべきなのか。いまの日本にこれら以外の選択肢があるとは思えないが、安倍晋三政権にはさらに2つの困難な「解」を求められている。

ひとつはイランとの良好な関係をどう均衡させるかであり、もうひとつが、対イラン対応を誤ることによって自由主義秩序を脅かす中国に漁夫の利を与えてはならないということだ。

ホルムズ海峡の緊張の高まりは、6月13日に安倍晋三首相が首相として41年ぶりにイラン訪問していたさなかに起きた。海峡近くで日本のタンカーなど2隻が何者かの攻撃を受け、ポンペオ米国務長官はただちに「日本は侮辱された」との声明を出した。いまだ謎の部分が多いにもかかわらず、アメリカは「イラン革命防衛隊の犯行」を断定している。

トランプ大統領のタンカー攻撃や拿捕だほに対する構えは明らかで「なぜアメリカが他国のシーレーンを守らなければならないのか」「自国の船は自国で守るべきだ」と、まことにもっともなことをいう。1980年代のイラン・イラク戦争の際のように、米英軍が護衛船団を組織して海峡を通る各国タンカーをエスコートしてくれた時代は過ぎた。

その当時ですら、ホルムズ海峡を通過するタンカーの多くが、日本であることを知ると、アメリカ国内で「日本安保タダ乗り論」が拡散した。それでも、当時の超大国のアメリカにはこれをやり過ごすだけの余裕があったのだ。ところが、オバマ政権時代になると、「もう世界の警官ではない」と事情が変わってきた。

トランプ大統領にあっては、「日本が攻撃されれば、われわれは第3次大戦を戦うことになり、あらゆる犠牲を払っても日本を守る。しかし、アメリカが攻撃されても、日本はわれわれを助ける必要がまったくない。彼らはソニーのテレビでその攻撃を見ていられる」と、不満が全開であった(6月26日FOXテレビ)。

軍事的参画がなければアメリカの不信感は免れない

日米安保条約をめぐっては、これまでも「アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守る義務を負わない」という世界に例を見ない非対称の双務性が、さまざまな摩擦を招いてきた。それでもアメリカの政治指導者がこの不公平感を公の場で言うことはなかった。

だが、アメリカ第一主義のトランプ大統領に限っては、決して不満を隠さない。しかも、アメリカはシェール革命のおかげで、来年春ごろからエネルギー輸出国に転じるから、さらに不公平感が強くなる。いまやサウジアラビアやロシアをしのぐ産油国になり、中東原油への依存度は著しく低下しているから、「なんで他国の船を守らねばならないのか」との考えはもっともなのだ。

そしてダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、民間タンカーなどを護衛するため同盟国に「有志連合」の結成を呼び掛けた。ダンフォード議長は「指揮統制の旗艦はアメリカが提供するが、実際の護衛は各国によって行われる」と提起した。そこには、「自国の船は自国で守れ」との“トランプイズム”が貫かれていた。

日本は中東原油に87.3%(2017年度)を依存しており、東日本大震災によって原子力発電が相次いで停止させられ、逆に化石燃料への依存度は増すばかりだ。トランプ大統領が不公平感から同盟のコストを求めている以上、何らかの軍事的な参画がなければ、日本への不信感は免れない。