今回の参院選は、安倍晋三首相にとって敗北だった。自民党と公明党の与党で改選過半数をはるかに超える議席は確保したが、日本維新の会を含めた改憲勢力は、国会発議に必要な3分の2を割り込んだ。しかし、その安倍氏はこの結果を受けても「改憲の議論を行うのが国民の審判だ」と強弁している。どういう理屈なのか――。
「改憲議論を行うべきだという審判を受けた」
「この選挙では憲法改正も大きな争点となりました。街頭演説のたび、議論を前に進める政党を選ぶのか、それとも議論すら拒否する政党を選ぶのか。今回の参院選はそれを問う選挙だと私は繰り返してきた。少なくとも議論は行うべきである、これが国民の審判であります」
投開票日翌日の7月22日午後、自民党本部で行われた記者会見に自民党総裁として臨んだ安倍氏は、冒頭発言でこう語った。
聞いていた記者たちは頭の中で「?」が浮かんだことだろう。今回の参院選で自民党と公明党の与党は改選過半数の63をクリアして71議席を獲得。非改選と合わせて「安倍1強」を存続する権利を得た。
一方、憲法改正については自民党、公明党に加えて日本維新の会を合わせた「改憲勢力」が85議席以上を確保して、参院で3分の2以上の勢力を維持できるかどうかが勝敗ラインだった。結果は自民57、公明14、維新が10。合計して81議席だった。「3分の2」まで4議席足りない。つまり今回の参院選で安倍氏は、憲法改正に向けての戦いには負けたのだ。
それなのに「議論を行うべきだという審判を受けた」というのは、どう考えても詭弁(きべん)ではないか。