内閣支持率は48.6%なのに、改憲に賛成は32.2%
安倍氏側の理屈を言えばこうなる。
①「3分の2」を維持できなかったが、それは今の勢力だけでは国会発議できないのを意味しているだけである。
②選挙期間中、安倍氏や他の自民党幹部は憲法改正を訴え「議論するか、しないのか」を問う選挙だと訴えた。
③参院選の結果、改憲勢力は半数を超える議席を獲得した。
④従って「議論する」が多数派であり、国民の信任を得た。
ということだ。もっともらしく聞こえるが、本当にそうだろうか。
参院選直後の22、23の両日、共同通信社が行った全国世論調査の結果をみると、安倍氏の説明は、事実とはいえないことがはっきり分かる。
「安倍首相の下での改憲」についての賛否を聞いたところ、「賛成」は32.2%、「反対」は56.0%だった。この結果を見るだけで、改憲への議論を進めるべきだという審判が下されたとは言い難いことが分かる。安倍内閣の支持率が48.6%だから、内閣支持層にも少なからず「安倍首相の下での改憲は反対」と考えていることがうかがえる。公明党支持層では63.3%が「反対」だった。
求心力低下を避けるには、強気で突き進むしかない
さらに興味深いのが支持政党別の「優先課題」。自民党支持層は45.4%が「年金・医療・介護」を優先してほしいと答えた。「景気や雇用」は38.7%。ところが「憲法改正」は、わずか8.4%にとどまっている。公明党、日本維新の会の支持層はそれぞれ5.4%、6.5%。支持政党なし層は、わずか2.8%。どこを見渡しても優先的に憲法改正に向けて議論を深めてほしいと理解できる数字は見当たらない。
「改憲議論を行うのが国民の審判だ」という論理が苦しいことは安倍氏も理解しているのだろう。しかし、これまで掲げていた改憲という目標を取り下げてしまった場合、自身の求心力が低下してしまうことをよく知っている。だからこそ、強気で突き進むしかないのだ。
無理に進めようとして批判が集まり「安倍1強」が終焉するのか。それとも国民民主党など野党の一部が切り崩されて再び改憲勢力が3分の2を回復し、改憲への道を進むことになるのか。方向性が見えるのは秋の臨時国会が召集されてから、ということになる。