危機に直面してダメ社員がエース的存在に!

例えば、私が知っているA社では9名の営業担当者のうち、トップの成績を挙げているのは2名を含めて7名が女性です。ある日、その2名がほぼ同時期に出産を迎えて育休に入ったのです。

トップの営業ウーマンが育休に入る直前の半年間で引き継ぎをしたのが、これまであまりパッとしない成績の女性2名でした。このうち、1名が一気にやる気を出し、わずか1年半で営業部のエース的存在に成長したのです。

前出の「蟻のコロニー」の話にどこか似ています。組織が直面した危機的状況によって、「バランス」が変わり、予備要因が台頭してきた好例だと思い、テレビの取材でお話をしました。

実はこのエースの女性は、入社したときは見た目にもチャラチャラしていて、上司からの評価も高くありませんでした。しかし、2名の営業が産休に入り、期待がかかった途端、スイッチが入ったのでしょう。見違えるような働きを見せました。

さらに驚くべきことに、このエースの女性だけでなく、すべての営業担当者たちのパフォーマンスがぐんと高まったそうです。全員が危機感を共有して、温存していた潜在能力を発揮したのかもしれません。

▼外部からの引き抜きで抵抗勢力を生んだ企業

一方、これとは逆に、「外的要因」が悪いほうに出るケースもあります。

B社では幹部を生え抜きで育てていました。とても勢いがあり、急成長。企業規模も大きくなり、創業社長が組織の戦力をさらに高めようと外部から幹部を5名ヘッドハントしました。

これまでの幹部10名に5名が加わったのですが、これが思わぬ負のスパイラルを生み出してしまいました。

内部では、生え抜きと引き抜き組で冷戦のような一触即発の対立が勃発。タイミングの悪いことに創業社長が亡くなったため、水面下の対立がますます先鋭化していきました。

結局、外部から引き抜いた要員の一人が社長になり、生え抜き組をどんどん出向させたそうです。そのことで内紛は拡大し、この会社は自社では立ちゆかなくなりました。

生え抜き組はとても優秀な幹部メンバーでした。

成果を出していたのですが、外部からの幹部が入ってきたことで一気にトーンダウンしたのです。やる気も能力も発揮できなくなるばかりか、勢力争いになり、組織全体が悪くなっていったのです。