サイバーエージェントは経営幹部交代で繁栄
ボストンコンサルティググループの元社長、堀紘一さんが以前講演の中で次のように語っていました。
「通常の企業ではトップの2割を既存事業に温存したままにして、まあまあ優秀な社員を新規事業に投入する。しかし、それでは新規事業は立ちゆかない。トップ2割を新規事業に投入すると、既存事業で空いたトップの座についた社員はやる気と能力をより出すことになる」
この話を聞いて、私はふとある企業名を思い浮かべました。インターネット広告代理店事業やゲーム事業を主とする企業、サイバーエージェントでした。
経営幹部の一部を定期的に交代させたり、優秀な人材は子会社の社長にしたりして成長機会を与えるようにするのが同社のポリシーで、業績もずっと右肩上がりのようです〔編集部注:今年1月下旬に同社が発表した、2016年9月期の第1四半期(2015年10~12月期)の連結決算では、売上高740億円、営業利益129億円と、ともに過去最高を更新〕。
同社の場合、「外的要因」ではありませんが、経営方針としてトップ層の一部を「空きポスト」にする戦略を採用することでボトムアップの力を引き出し続け、組織が長く繁栄している。これは、裏を返せば、今は仮に業績に直結していなくても、「予備要員」のような存在の社員もムダではないということかもしれません。
組織のトップだけではなく、マネージャーもこの集団の力学、組織の「習慣」「仕組み」を活用していけば、部下のモチベーションや能力を最大限引き出すことができます。
例えば、あなたが営業部の課長であれば、最優秀の営業マンを既存の顧客対応から新規顧客対応にシフトさせる。それが全体の業績を上向かせる可能性を秘めています。さらに、ポストが空いた既存の顧客対応の「枠」に、「一番下」のふだんはやる気を出さないお荷物的存在の2割の社員を含む人々が興味を示すかもしれません。そうなればしめたものです。
蟻のコロニーの力学と企業組織のそれが全く同じかどうか分かりません。しかし、蟻の集団の力学を上手に活用すれば、組織を活性化したり再生したりする可能性は大いにあると思います。
(参考資料)
http://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000001082_all.html
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1602/17/news131.html