ビール復権と意地の激突「天王山」を制すのは?

その結果、アサヒの昨年の年間ビール販売は前年実績を2%割り込んだ。その意味で、トップを独走するアサヒが新ブランドを投入し、巻き返しを図る今年は、昨年を前哨戦とすれば、ビール大手4社がビール復権と意地をかける「天王山」と位置付けられる。

同時に、サントリーとサッポロの両社には中級品市場での3位、4位争い、全面刷新するヱビスとサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」との高級ビールの首位争奪戦もあり、ビール市場を巡るシェアの奪い合いは例年以上の激しさが予測される。

実際、各社が年初に公表した今年のビール販売計画は強気だ。アサヒは前年比2.3%増の1億850万ケース(1ケースは大瓶20本換算)、キリンも同率で5340万ケースの目標を掲げる。サントリー、サッポロはそれぞれ6.3%増の2621万ケース、5.2%増の3070万ケースと、高い伸びを目論む。

しかし、ビール復権をかけた積極策にもかかわらず、現実は限られたパイの奪い合いに終わる可能性は捨て切れない。事実、昨年のビールの課税出荷数量は各社がビールに注力したことから0.1%増の2億1489万ケースと19年ぶりに増勢に転じたものの、ビール類全体は0.5%減の4億2492万ケースと11年連続の前年割れとなり、過去最低水準に落ち込んだ。

各社が今年をビール復権の年と位置付けるのは、2016年度税制改正で2年続けて見送られたビールへの税率を引き下げるビール類の酒税見直しを睨んだ思惑もある。縮小基調に歯止めがかからないビール類市場は、パイが増えず各社がシェアを奪い合うだけの「ゼロサム・ゲーム」と化しており、新ブランド投入が自社商品の共食いを招く罠に陥る恐れも否定できず、ビール復権に向けた本願成就の道は険しい。

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