【田原】だけどいま石油の価格はどんどん下がっています。足りないなら上がらないといけないはずだけど。

【鈴木】石油の専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、いま価格が下がっているのは短期的な現象でしょう。資源の需要と供給は、人口に左右されます。中長期的には人口が増えているのだから、やっぱり資源の奪い合いは起きる。人口予測で言うと、世界の人口は2100年ごろにピークを迎えて100億人に達すると言われていますから、今後100年間くらいは非常に危険な状況が続くんじゃないでしょうか。

【田原】資源を奪い合うのが生命の本質だとしたら、どうすればいい?

【鈴木】生命は「核」と「膜」で境界線をつくって、内に資源を囲い込もうとします。この機能を弱めて、世界を「網」としてとらえる仕組みをイノベーションによってつくっていこうというのが、僕の考えです。

【田原】ごめんなさい、抽象的でよくわからない。具体的に聞きます。鈴木さんの言葉で言うと、国境というのは「膜」ですね。それを守るために、いま軍隊が存在している。これはもういらない?

【鈴木】軍隊をなくすのは無理だと思います。ただ、いま中央集権的な仕組みで運営されている軍隊を、分散的な仕組みでやることは可能なんじゃないかと。

【田原】分散って、国連みたいなイメージですか。

【鈴木】いや、国連も単位が国です。僕が言っているのは、もっと細かい単位の分散です。たとえば個人とか。

【田原】個人じゃ軍隊持てっこないじゃない。スイスみたいに、全員が武装するってこと?

【鈴木】近いです。ただ、スイスの全員武装は、あくまでもスイスという国を守るための方法論です。それよりも、スイスという単位自体をなめらかにしていこうと。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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