【田原】ヤフーとは違う点が2つあると言いましたね。使いやすさと、もう1つは何ですか。
【鈴木】ヤフーニュースは25人程度の編集チームがあって、載せる記事をセレクションしています。スマートニュースも同じく人間の力で記事を選ぶのですが、25人ではなく数百万人の力を使います。
【田原】あれ? 機械の力で自動的に記事を選ぶって聞いたけど。
【鈴木】そこは少し誤解があります。ヤフーは25人の編集部員が記事を選びますが、何を選ぶのかについて、25人の意見がばらばらになることもあるかと思います。そのときはおそらくデスクが決めるとか、議論をして投票をするとか、何らかのアルゴリズムで意思決定しているはずです。じつはスマートニュースも構造は同じです。数百万人ものユーザーによって載る記事が決定されていきます。ただ、数百万人いると、会議を開いて意見をまとめることはできない。その意見集約に人工知能という機械の力を借りているのです。選んでいるのはユーザーという人間の力を集めた集合知です。
【田原】もう少し詳しく説明してもらえますか。
【鈴木】ユーザーがどの記事を何秒間読んだのかというデータは様々な視点で分析されます。たとえばよくタップされるものの、離脱時期が早い記事は、タイトルは扇情的だけど中身がない“釣り記事”で、読む価値が低いかもしれない。そういうことを誰か特定の人ではなく数百万人の集合知で判定して、1日1000万件の記事の中から1000本くらいに記事を絞っていくわけです。
【田原】なるほど。最近、キュレーションという言葉をよく聞くけど、スマートニュースはユーザーがキュレーションしているわけだ。
【鈴木】そうですね。ただ、個人的にはキュレーションと言われることに対して若干の違和感はあります。そもそもキュレーションは美術館で展覧会を企画するキュレーターからきている言葉で、キュレーションすることは、キュレーターの思想の表現と言っていい。でも、集合知で選ぶスマートニュースが思想の表現かというと、ちょっとピンとこない。僕自身はキュレーションという言葉は使わず、ニュースアプリと言っています。よくスマートニュースもキュレーションサービスと言われますが、それはもうしょうがないという感じで見ています。