孫正義の頭を光らせて採用決定

【田原】具体的に、どんな商品を企画したのですか。

【中澤】最初に手掛けたのは、カシオがソフトバンクに初参入するときの1号機でした。ソフトバンクって、孫正義さんがプレゼンのときから全部の機種をチェックするんですよ。ただ、孫さんは時間がないから1分で魅力を伝えないといけませんでした。私が企画した機種はカメラに特徴があったのですが、どう伝えようか、かなり迷いました。

【田原】結局、どうプレゼンしたの?

【中澤】「この機種は、孫さんの顔がイケメンに撮れます」って言いました。実際、その場で撮ったら、孫さんの頭がピカッと光っていて、みんな大爆笑。孫さんが「俺の頭を光らせた」と喜んでくれ、参入が決まりました(笑)。

【田原】うまいこと言うね。

【中澤】ショップでバイトしていた経験が活きたのかもしれません。店頭でも、機種の特徴を一言で説明しないと売れません。あれこれ説明する時間はないし、お客さんも細かい説明を求めていない。プレゼンも同じだと思います。

【田原】カシオには何年いらしたんですか。

【中澤】5年です。カシオはNECと日立と合弁会社をつくっていました。しかし携帯が売れなくなり、国内外で採用がなくなり、新機種を出せない状況が続きました。それでリストラが始まって、私も自分で辞めるか、別の部署に行くか、NECさんに移るかという選択を迫られました。

【田原】どうして携帯が売れなくなったんだろう。

【中澤】スペック競争に入ってしまったからでしょう。ユーザーにとって、0.1ミリ薄いかどうかはどうでもいいこと。でも、その違いで採用されたりするので、本来は求められていない機能まで追加するようになってしまいました。機能を追加すれば開発費がかかって価格も上がります。誰も買わなくなるのも当然です。