最近、確かに若年性認知症の患者数は増えています。しかし、これはこれまでほかの病気と間違って診断されていたものが医学の発展とともに正確に診断されるようになったのが原因で、おそらく実質的な数は変わっていないと思います。患者数は全国に7万~8万人。

お年寄りの認知症の場合、アルツハイマー型が半分以上ですが、若年性認知症の場合は脳梗塞などによる血管障害が原因で起きる血管性認知症が一番多いのです。次が交通事故など頭部外傷後の認知症。3つめにアルツハイマーなど病状の進行とともに次第に脳が萎縮してくる変性疾患型のもの。

脳梗塞、交通事故といった原因がはっきりしているものは診断しやすいのですが、アルツハイマー、ピック病、レビー小体型認知症といった変性疾患は病気になる原因がわかっていません。徐々に出てくるので変化に気がつきにくいからタチが悪い。

若年性認知症は原因が多彩です。治療法も異なるので、きちんと見極めなくてはいけません。診察ではいろんな検査をします。まずは問診。いつ頃からどんな症状が出てきたか。急に表れたかゆっくりか。患者さん本人やご家族と会話をしながら気分の落ち込み具合、物忘れの程度などの症状を見ます。次に神経心理検査、MRIやCTによる画像検査、脳の血流を見るSPECT検査などを行い、総合的に判断します。

他人よりも自分が先に変化に気づくものです。感じたことを無視しようとせず、おかしいなと思ったら、専門外来で診断してもらうのがおすすめです。日本老年精神医学会、日本認知症学会、日本精神科病院協会のサイトで専門医は調べられます。

アルツハイマーの場合、今の治療では残念ながら進行を止めることはできませんが、クスリを飲むと、進行を遅らせることはできます。病状は15年から20年と長いスパンで進行しますから、早いうちに飲み始めるほうがいい状態を維持できます。悩むよりも、早めに診察を受けて早期に発見することが大事なのはほかの病気と一緒です。

順天堂大学医学部教授 
新井平伊
(あらい・へいい)
1953年生まれ。順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院院長代行。日本老年精神医学会理事長。著書に『認知症ケアのコツがわかる本』。
(構成=遠藤 成)
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