G20で採択された15項目の行動計画には、これまでゴーイング・マイ・ウエイだった中国など新興国も参加した。納税の透明性を確保するため、租税条約の情報交換規定を通じて国別収入や税引き前利益、支払い所得税額、従業員数、重要な資産といった多国籍企業の情報が入手できるようになるため、中国にとっても大きなメリットがある。一方、日本の多国籍企業は財務諸表の管理を現地の子会社に任せているケースが多く、情報管理のため人員拡大やIT投資を迫られる恐れもある。
早大の青山教授は「合意の意味は非常に大きい」と強調する。
「中国、インド、ブラジルも入った40カ国以上の国々を『もやい(船と船とをつなぎ合わせること)』のようにつないだ意味は大きい。国際課税では前例のないことで、非常にパワフルだと思います。『我々の国はこう解釈している』と自国の都合を押し通すのは難しくなります」
課税のグローバル化を大きく推し進めたのは納税者の怒りだ。英国においても、「市民も企業も同じ社会の構成員なのだから、同じように税金を負担すべきだ」という庶民感覚が改革の原動力になった。日本も「よらしむべし、知らしむべからず」「税金は取りやすいところから取る」という風潮から卒業して、健全な納税者意識を育て、ルール作りに生かしていく必要がある。
※1:法人税が12.5%のアイルランドに2つの関連会社を設立し、米国の本社から海外事業のライセンスを付与する。オランダの関連会社をはさむことでライセンス料にかかる源泉税を免れ、利益の大半をバミューダ諸島(英国の海外領土)にある管理会社に移す手口。
※2:税制調査会「第3回 国際課税ディスカッショングループ」(2014年4月4日)での大和総研・米川誠氏の発表資料。