世界を巻き込んだ「課税ウオーズ」は3年前、米スターバックスの税逃れをメディアがスッパ抜いたことから始まった。スターバックスの英国法人が直近の3年間で12億ポンド(約2232億円)の売り上げがあったのに、納めた法人税はゼロ。英国での店舗は735店もある。スターバックスは「わが社は英国で雇用を生み出しており、従業員の社会保険料も一部負担している」と開き直ったが、納税者は「税金を払わないスターバックスのコーヒーを飲むのを止めよう」と不買運動を起こした。さらにグーグル、アマゾン、アップル、コカ・コーラなどの悪質な租税回避が次々とやり玉に挙げられた。
中でもグーグルが使っていた「ダブルアイリッシュ・アンド・ダッチサンドイッチ」というスキームは凄まじかった(※1)。知的財産から生じた所得への優遇税制を敷くオランダの「パテント(特許権)ボックス」と法人税ゼロのタックスヘイブンを巧妙に組み合わせた「節税策」だ。
経済協力開発機構(OECD)によると、多国籍企業の税逃れは控えめに見積もっても年間1000億~2400億ドル(12兆3300億~29兆5900億円)、世界の法人税収入の4~10%に相当するという。
前出のオズボーンは英国世論の怒りを追い風に独財務相ショイブレと共闘を組み、主要20カ国・地域(G20)やOECDに働きかけた。米国も自国の多国籍企業による悪質な租税回避を持て余していた。OECDは「税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクト」を立ち上げ、今年10月にリマで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、多国籍企業の税逃れを防ぐ15項目の行動計画が採択された。