仕事に熱中しすぎると、思わぬ罠に陥ってしまうことがある。場合によっては、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、長期間、東京拘置所の独房に閉じ込められることがある。
特捜部に逮捕されるとほぼ間違いなく起訴される。大阪地検特捜部に逮捕、起訴された村木厚子氏(現厚生労働事務次官)に無罪判決が言い渡されたので、世間では、有罪、無罪は半々くらいという印象を持たれているが、これは事実と異なる。検察に起訴されると99.9%は有罪判決を言い渡されるのである。
それゆえ、読者は特捜部に逮捕されるような事態は、絶対に避けなくてはならない。そのために拙著『国家の罠――外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮文庫)を読み、逮捕、勾留を代理経験する意味がある。
女性が逃げていく究極的な技法
ちなみに人生では、「縁切りの技法」が重要になることもある。こういうときにも「雑談する力」が鍵を握る。
外務省のロシアスクール(ロシア語を研修し、対露外交に従事することが多い外交官の語学閥)にプレーボーイで鳴らした先輩がいた。話術は巧みだが、決してハンサムでも、金持ちでもなかった。お洒落でもなく、濃紺かカーキ色のワイシャツをいつも着ていた。これだと女性と外泊して、帰宅せずに外務省に登庁しても汚れが目立たないからだ。
あるとき私が、
「なんで先輩はそんなにもてるんですか。トラブルに巻き込まれたことはないのですか」
と尋ねると、「ない」という返事が返ってきた。