【飯島】地域の発展には、まずインフラ整備が必要ですね。

【朝青龍】そうです。現状、シベリア鉄道はロシアのイルクーツクから南下して、モンゴルのウランバートル、中国の北京を結んでいます。

モンゴルには、優良な石炭が採れることで世界的に有名なタバントルゴイという地域があります。タバントルゴイ鉱山は10億トン以上の埋蔵量を誇る世界最大規模の高品位原料炭炭鉱です。タバントルゴイから鉄道を敷いて、シベリア鉄道に繋がると、世界のエネルギー供給が劇的に変化するぐらいの大事業になる可能性を秘めています。

【飯島】数年前までは、中国の高成長があり、各先進国の金融緩和政策による余剰資金によって、石炭・石油などの資源が投機対象となり、価格が急騰していました。しかし、中国経済が大減速し、世界的にも景気の不透明感が高まっている今、資源価格が下落してしまった。モンゴルとしては、石炭事業から得られる利潤を担保にシベリア鉄道を延伸させようという考えだったのでしょうが、それが厳しい状況になってしまった。

【朝青龍】そうなのです。石炭の価値が下がっているから、だれも本腰を入れられない。そこで日本政府にお願いしているわけです。

【飯島】安倍総理も、横綱の真摯な気持ちをよく理解しています。名前は出さないけど、ある外国人力士は、自分のビジネスばかりに精を出していた。相撲でできた信頼をぶっ壊してまでお金に執着する。ああいうのは、尊敬されないね。やはり、横綱の心には、自分のビジネスの前に、国がある。モンゴルで最大級の敬意を集めているのもわかる気がします。

【朝青龍】モンゴルの人口は300万人。土地は日本の4倍もある。この国をなんとかしたい。どうやって生き残っていくのか、繁栄していくのか、真剣に考えています。

モンゴル国内でもいろいろな議論があって、中国ともっと仲良くしたほうがいいという人やロシアにもっと近づいたほうがいいという人がいます。中には、私が日本のことを強く推すので、日本の利益を代弁していると非難する人もいます。確かに、私は日本のことを推しているかもしれません。しかし、それは世界で一番の技術がたまたま日本にあるからであって、モンゴルのことを一番に考えての話なのです。とても頭にくる話ですが、私のことを日本の利益の代弁者だと言いたい人には言わせておきます。結果を見てもらえればわかると思っていますので。技術・信頼といった日本の素晴らしいところを取り入れることはモンゴルの国益です。