店舗全体のレイアウトを考え直す

――具体的にはどのような改革を進めていくのでしょうか。

従来、入り口でお客さまにご来店の目的やお探しのアイテムなどをお伺いしてから、店内をご案内していました。そうすることによってお客さまとお話がしやすく、提案もしやすいわけです。しかしこれからは自由にご覧いただき、途中でお客さまにお声をかける、あるいはお客さまにお声をかけていただく。そうすると、自ずとお客さまとのコミュニケーションの仕方が違ってきます。そのコミュニケーションの仕方にスタッフが慣れなければなりません。また、入り口からスタッフが案内することを想定して店舗が作られているので、これまでサインやポップなどはあまり重要視されてきませんでした。

自由にご覧いただいても分かりやすいお店の作り方となると、店舗全体のレイアウトを考え直す必要があります。説明しなくても提案の趣旨が分かるように表現を研ぎ澄ましていかなければなりません。社員も単にポップなどで説明できるようなことではなく、お客さまが心の中で思っていることをくみ取って提案できるような力をつけていくことが必要だと思います。ほとんどのお客さまは専門家ではないのでご自身で思っていることを言葉にするのは、そう簡単なことではありません。それを言葉にし、ご説明するのが私たちの仕事だと思います。食べ物や洋服は買う機会も多いので知識も経験も相当にお持ちですが、一般的に家具やインテリアは買う機会も少なく、それほど経験を積んでいるものではありませんので、お店側から提案していくことが重要だと思っています。

また店舗の地域ごとの特性に合わせて新しい店作りを進めていきたいと思います。例えば有明のショールームは約2万4000平方メートルの広さがありますので、その中にいろいろな需要を満たすさまざまなお店が入っているインテリアのショッピングモールと考えるわけです。200~300平方メートルの売り場を1つの店に見立てて、「若者のカップルのためのお店」、あるいは「二世帯住宅のお父さん、お母さんのためのお店」というように、今、テーマ別、ターゲット別にお店の中を見直し始めているのです。

以前、この業界では家具メーカーごとに売り場がつくられていたのですが、1997年頃から自主編集のテーマ別売り場を作り始め、1999年に出店した3店舗ではその考え方で店をオープンしました。比較的小規模なメーカーが多いため、例えば収納家具を作るメーカー、椅子やテーブルを作るメーカーといったように得意分野に製造を特化するのが一般的です。そうすると商品のトータルデザインが別々になるため、色、サイズを合わせるは非常に大変です。そこで基本色などを合わせるような企画を当社が行い、編集し始めたのです。

当社は業界の中ではかなり先駆けていろいろなことに取り組んできたと思っています。

――百貨店などは最上階に催事場を作ってそこからお客さんが下に降りていくようなシャワー効果を期待した仕組みづくりや逆に地下の食品売り場などで集客し、客を上に上げていく噴水効果などを狙った戦略を展開していますが、大塚家具の場合はどうですか。

これも一昨年から昨年にかけて進めてきました。新宿店などでは最上階を催事場としてイベントや住宅関連のオプション会なども行っており、他の店にも展開したいと考えています。

また、先ほども触れましたが、日本人は、食べること、着ることに関しては成熟していて、楽しいことやおいしいことを数多く経験しています。ところがインテリアはそこにまで至っていない。それを体験してもらえるようなビジネス側の供給体制も十分ではありません。インテリアは楽しいものですから、そこが整ってくると業界が活性化すると思います。「もっと家をよくしたい」「もっと住まいをよくしたい」という欲求も必ずでてきますから、買い替えが加速するのではないかと思います。