取り組む課題はたくさんあります
――インターネット販売などではどのような戦略を考えていますか。
インターネットは検索性が高いので、欲しい商品の情報を分かりやすく見てもらえると思います。動画も活用していきたいと思っていますし、インターネット販売もしていきたいと考えています。
当社では、「最低価格保証」(同一商品が同一時期に同条件で大塚家具より安く売られている場合)をしています。インターネット販売についても、販売条件が違うものがありますが、条件が同じ場合は最低価格保証をしています。新品で配送条件が同じなら競争は可能です。照明器具も取り付け費用などを考えれば、競争は可能だと考えています。
――大塚家具の原点は箪笥ですが、箪笥そのものの需要がかなり少なくなっているのではないでしょうか。
確かに箪笥の需要は急速に少なくなっています。しかし収納の需要がなくなっているわけではありません。そこで考え方を変えて、箪笥ではなく収納が重要だと。では収納はどのようにお客さまのニーズを満たしているのか。ひとつは造り付けのクローゼットがありますし、収納グッズもいろいろあります。しかしそれで満足されているかというと必ずしもそうでもない。だから当社はいろいろやれることがあるのではないか、収納の機能でどれだけできるのか。それを私たちは考えたのです。
一時期住宅の造り付け収納にお客さまは流れていってしまったのですが、意外と小回りがきかない。例えば、スペースはあるのですが、細かいものをしまっていくときに、プラスチックの容器を使わなければいけないとか、意外と面倒くさいのです。あとからチェストだけ家具屋さんで買っていくという方も結構います。だから初めから収納のプランニングを考えたらいいのではないかと思っています。狭い空間を上手に使うためにユニットにするという発想から、箪笥や書棚など、それぞれの作り手たちを当社がコーディネートする形で商品開発しています。実は床から天井まで空間を使うと床面積を3割減らしても、逆に収納量は3割増やせるんです。
そこで、上手な空間の使い方を提案していくことも研究しています。国内だけでの200数十社のネットワークがありますから、いろいろなメーカーさんをソリューションパートナーとしてチームをつくることが、これから多くなっていくのではないでしょうか。また家をつくるときには家具から考えてもらうと、非常に満足いただける家になりますから、「家具から考える家づくり」も提唱しています。
――リユース事業は今後、大きな柱となると思いますが、具体的にはどのような形で行っていくのですか。
住宅も家族構成が変われば引っ越したり、リフォームしたりするように、家具も購入して所有するだけにこだわらず、家具を活用していくという発想です。生活に合わせて住まいの環境を変えるには、家具こそやりやすい手段です。またリユースの市場ができれば、レンタルの市場もできますので、短い期間だから安い家具を使うという考えから、同じコストでもレンタルなら高いクオリティーが維持できるという発想に代わっていくのではないかと思います。
ただこれはひとつの市場をつくっていくということなので時間はかかると思いますが、このリユース事業の発表には大きな反響がありました。それだけ潜在的に今使っているものを何とかしたいというニーズがあるんだと思いました。またアンティークやヴィンテージに対する人気も非常にあるので、そちらの側からも注目されています。
――どのくらいの期間で軌道に乗せようと考えているのでしょうか。
どのくらいの市場規模を想定しているかにもよりますが、仕組みとしては2~3年ぐらいででき上がっていくのではないでしょうか。修理のネットワーク、どこに家具を保管するか、インターネットの活用、またインターネットのオークションなどで個人と個人のマッチングが必要になっていくかもしれません。リユースの家具を安く提供してもらっても、物流経費はかかります。近隣で商品を回していく仕組みづくりのためのインターネット活用も重要になってくかもしれません。
大塚家具として取り組んでいかなければならない課題はまだまだたくさんあります。今後もしっかり経営していきたいと思います。
大塚家具社長兼営業本部長。1968年、埼玉県生まれ。一橋大学経済学部卒。富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)勤務を経て、94年大塚具入社。96年取締役を経て、2009年社長に就任。14年7月社長解任。15年1月社長に復帰。