そうなると、スピード選挙にしておけば、鳩山氏が勝つ可能性を高めるだけではなく、岡田氏に対して世間の同情が集まる。実際、世論調査などでは、岡田氏が圧倒的な人気を誇っていたし、それを背景に代表選挙でも健闘する可能性が高い。投票結果を見ても、鳩山氏124、岡田氏95の29票差だった。15人が態度を変えればひっくり返っていた状況だ。こうしたことの結果、鳩山氏は岡田氏を幹事長として受け入れざるをえないし、党内でもこの体制がある程度すんなりと受け入れられるだろう。


図1)組織構築力の構成要素

そして自分は少し時間をおいて、選挙担当の筆頭代表代行として執行部に残る。この人事の発表は選挙から1日以上たっての17日夜である。それまでに主な世論調査は終わっていて、自分が残留することによるマイナス影響はあったとしても、表面化する可能性が低いし、民主党としての西松建設献金事件決着の表明にもなる。

もちろん、本当にここまで緻密な計算が小沢氏の頭の中にあったのかどうかは知る由もないが、実際はほぼこうした動きであった。また、この計算が功を奏するかは、あとしばらく時間がたたないとわからない。唯一わかっているのは、今回の一連の騒動にもかかわらず多くの世論調査が、民主党の人気回復を示したことである。

ただ小沢氏の行動は、組織構築のための動きだと考えると理解しやすい。小沢氏は、上記のプロセスで組織構築の3つの要(図1)のうち、少なくとも初めの2つについて、きちんと押さえていると考えられるからである。仮に民主党が今後の選挙で政権をとることができれば、少なくとも部分的には小沢氏の組織構築力に負うところがあると評価されるかもしれない。