1)仮定法
過去形は「妄想」を明確に示す目印
そもそも仮定法とは、「現実とは違う仮定の話(=妄想)」を語るときに用いられます。例えば、シンデレラが「I wish I could go to the party, too!(私も舞踏会に行けたらなぁ)」というのも、家でたった1人で留守番しているという現実ではなく、華やかな舞踏会で踊る自分を妄想していることを表しています。
日本には「空気を読む」文化があります。その人のしゃべり方やテンションなどから、ある人が語る妄想がどこまで本気なのか、ある程度推測することができます。
でも、常に異文化と交流してきた歴史を持つ英語では、文化が違えば空気も異なるため、そうはいきません。そのため、言葉の中に「これは妄想です」と明確に示す必要が生じます。その目印が「過去形」なのです。
ちなみに、英語ネーティブが過去形を使うとき、「1歩遠ざかる」というイメージを持っています。これには(1)現在から「1歩遠ざかる」、(2)現実から「1歩遠ざかる」、(3)相手から「1歩遠ざかる」の3パターンがあります。もともと過去形といえば(1)のことだけを指しましたが、仮定法は(2)の発想によるもので、妄想が現実から「1歩遠ざかる」ことになるからです。
(3)の発想とは、Will you ~?(してくれる?)をWould you~?(してくれますか?)のように、過去形にすることで丁寧になるのです。
また、英語の世界では「1歩遠ざかる」ときは過去形を用いますが、「2歩遠ざかる」ときは過去完了形となります。ですから、「過去のさらに過去(大過去)」や「過去の妄想(仮定法過去完了)」になると、had+過去分詞を用いることになるのです。
ちなみに仮定法は英語で「the subjunctive mood」。正確に訳すと「叙想法」といいます。このmoodの意味は「気持ち」。だから仮定法は、「~だったらいいのに」といった、気持ちがこもる表現だともいえるのです。