(上)SCSKのリラクセーションルームは、社員は20分500円、40分1000円で利用できる。(右)数室あるカウンセリングルーム。(左)KDDIでは、精神科産業医による社員向けセミナーが行われる。

しかし、休職者が多く出るほど業務で忙殺されている部門の管理職に対し、集合研修への参加を依頼してもなかなか受け入れられないのが現実。そこで、武重氏は人事部長とともに各本部の部長のところへ直接足を運び、「こういう状況になっているので参加してください」と危機感を持たせるよう説明を重ねた。なかなか理解を示してくれない管理職もいたが、対策を取らないときのマイナス面を数字で示し、伝えた。結果、集合研修への参加率は90%を超えた。

3年間で休職者が3分の2に減

こうした取り組みに加え、精神科産業医の増員や長時間労働者に対する面談も充実させた。結果、eラーニングをスタートした12年と15年3月末を比べると、メンタル不調による休職者はおよそ3分の2に減少。具体的な人数は公表していないが、少なくともそれだけの生産力ダウンを防いだことになる。

「金額は会社の売り上げからすると微々たるものかもしれません。でも人が倒れる会社と倒れないようフォローする会社では、社員の会社に対する信頼が違ってくる。その変化が大きいと思います」(武重氏)

社員を大切にする姿勢を示し、信頼関係を築くうえでもメンタルヘルス不調を未然に防止する施策の導入は意義があるといえる。それは同時に、組織をいきいきと活性化する基盤づくりにもつながるであろう。

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