困ったときの国交省の営繕部

計画にGOサインを出したのは、民主党政権下の文科大臣である田中真紀子氏だ。ラグビーワールドカップと五輪招致を目指して新国立競技場の建設案が浮上したのも、予算がついたのも、国際コンペが行われたのも民主党政権下のこと。事実関係からして下村氏は田中氏の尻拭いをしているだけなのに、責任問題に発展しているのが不思議でならない。民主党政権時代の素人大臣の下で行政がまともに機能していなかったことも不幸を招いた一因だ。

新国立競技場建設という巨額の予算を獲得した文科省が舞い上がってしまい、公共工事の経験が豊富な国土交通省に協力を仰ぐことなく、計画を内部で抱え込んでしまった。専門知識のある人間がチェックすることなく計画が進むとこういうことになる。

12年末に政権交代が実現し、翌13年に東京五輪が決定。安倍内閣で建設の具体化に向けて動いてみたら、どんどん総工費が増えた。

例えば、安倍内閣の下で計画からスタートした16年の伊勢志摩サミットでは、5000人程度の報道関係者を収容できる2万ヘクタール規模のプレスセンターの建設が必要となり、予算を獲得する外務省は早々に国交省の営繕部に丸投げするらしい。公共工事は公共工事のプロに任せるべきだ。それが今回の一番の教訓だ。

ザハ氏側は反論声明でコストが高騰した理由として「価格競争がないまま早い段階で建設業者が決定した」と問題点を指摘している。

ザハ氏の言い分が正しいのであれば、当初予定の1300億円で建設できる業者を見つけることができるはずだ。それは海外のゼネコンであっても信用に足りる大きい企業であれば問題はない。ザハ氏のデザインを白紙に戻す前に、世界のどこかから1300億で新国立競技場を建設できる業者を探してもらおう。それができないのであれば違約金を払ってもらえばいい。せっかくザハ氏側が協力を申し出ているのだから、働いてもらおうではないか。今のままでは、建設しない建物に高額な監修料を税金で払って終わりになってしまう。

(写真=時事通信フォト)
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