ロボット時代が突きつける難題の序章
【専門家に聞く】情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授・湯淺墾道
空で事故が起これば、必ずそれは民家や通行人などを直撃する。実際、すでに多くの墜落事故も起こっている。上空にさまざまな飛行物体が飛んでいることを想像するのは、いささか憂鬱でもある。ドローン同士の衝突事故も起こるだろうし、いつなんどき、落ちてきたドローンのために家が焼けたり、人が死んだりする事故が起きるかもわからない。遠隔操作されたドローンからの銃撃で殺されるといったことも必ずしも杞憂ではないだろう。CNNが報じたところによると、7月、米オハイオ州の刑務所に飛んできたドローンが中庭にタバコや麻薬を落としていく騒ぎもあった。
ビジネス面では、空域をめぐる利権争いが“ゴールドラッシュ”の様相を見せているが、「空」というリソースの大衆化で、社会はまた大きな難題に直面することになった。技術の進歩でドローンが小型化するのは目に見えており、さらに小型化すれば、蜂や蚊のようになって、知らぬうちに屋内に侵入、会話を録音したり、室内を撮影したりする可能性も否定できない。
――ドローンは法的にはどんな問題を提起しますか。
これまでも薬剤散布用ラジコンヘリが墜落するなどの事故はありましたが、そのような大きく高価な機器を持つ人は限られており、関係者にはそれなりの職業的資格とかリテラシーが備わっていました。だから法規制がなくても自主規制がきいたわけですね。ドローンの問題は、無人で動くおもちゃのように安い物が、高度の機能を持ち、しかも大量に、急速に出回るようになったことです。4~5万円も出せば、だれでも買えますからね。
無人で動く物、しかもプログラムを内蔵した自律型ロボットをどう規制したらいいのか。地上はたとえば道路交通法、水上は船舶操縦士法、空は航空法というようなカテゴリーごとの規制だけでは難しい。ドローンの先には、たとえばサッカーボールのように地上や水上を自由に転がり、ときにはニョキっとプロペラを出して空も飛ぶというようなものが出現するわけで、縦割り規制をはみ出してしまう。
自律型ドローンとなると、責任を問うべきドライバーもいない。ロボットと責任の問題はいま学会のホットなテーマです。
――プライバシーの問題はどうでしょうか。
深刻な問題を提起するのは間違いないですね。当面、何らかのガイドラインとか自主規制策などが考えられるでしょうが、それだけだと甘い。インターネットもそうですが、新しい道具は、常に犯罪者によって発達させられる。やはり法による規制、刑罰が必要だと思います。