合従連衡や「選択と集中」はさらに進む
他の業界にしても同様の流れである。たとえば、鉄鋼業界だ。再編によって新日鉄住金とJFEHDの2強体制に固まったが、鉄スクラップを原材料とする電炉メーカーは依然として30余社を数えることもあり、再編は免れない情勢だ。
経営破綻が相次いだことで激震が走った金融業界も、業界地図は大きく塗り替わった。ここにきてメガバンクグループや大手証券会社、さらには大手保険会社の再編は一服した感はあるものの、今後は、地方銀行の合従連衡がこれまで以上に進むことが予想される。
このように多くの業界で合従連衡や「選択と集中」といった事業の再構築などにともない業界再編が繰り返されてきたが、今後も再編の動きは加速こそすれ、止まることはないはずだ。
『図解!業界地図 2016年版』ではとくに、資本関係や提携関係について可能な限り触れている。本書の図版では単なる矢印で示されているだけだったりするが、そこには巨額の資金も、各社の思惑や戦略も含まれているのだ。それらを手がかりに、読者の知識や読みも加えることで、将来的な業界再編やM&Aを予測することができるケースもあることだろう。
M&A(企業の買収・合併)や事業再編は、当該企業で働くビジネスパーソンや関係者、就職希望者にとっては一大事。投資家にとっても見過ごすことができない出来事である。
人口減少による国内市場の縮小が避けられない以上、今後の持続的成長を目指す国内企業にとっては、海外市場の開拓が重要なテーマになってくる。事実、多くの企業は海外事業に着手し、拡大に向けて動いているところだ。そうした、海外進出や海外事業の進捗状況、海外M&Aについても、本書では主要なテーマであると判断しページを割いた。
目まぐるしく変化している企業や業界の動きがすぐに理解できるように、コンパクトにまとめた一冊である。