複雑な要素を調和させ、洗練させる
私が大切にしている「シンプルであること」は、単に物事が簡潔で明快であるとか、素材を生かす、構造的に分かりやすいということだけではありません。異質なものやさまざまな要素を組み合わせることで逆にシンプルな美が生み出されることがあります。日本の「衣」「食」「住」の心にも通ずる点だと思います。複雑でも「調和」していたり、さらには融合して「洗練」されたものになることは、私にとってシンプルであることと同様、重要なことです。
今、多くの企業がダイバーシティの推進に取り組んでいます。特定の社員が有利になったり、不利になったりしないよう配慮しながら、全員が高い生産性を維持できる環境づくりを目指しています。ダイバーシティは性別や年齢、国籍など、外見的な属性だけでなく、表面的に見えない人生経験や価値観、性格なども含みます。
ただ、個性を活かすということは、行き過ぎた自己主張を許すということではありません。それぞれが主張し合った上で、ベストなチームをつくり上げるために手を携えていくということだと思います。企業には個性豊かな人が大勢います。違いがあること自体は良いことです。ただ、一人ひとりの個性が尊重されると同時に、個々の違いがシナジー(相乗効果)を生み出せるようにまとまらなければなりません。
そのために必要なのは、仕事に積極的に取り組み、皆で話し合って理解を深め、チームとして良いものを創造していこうとする全員の熱意です。口先だけではない心からの敬意と誠意が不可欠です。これがあって初めて成長を導き出せると信じています。
サシン・N・シャー
1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、現職。