──それでは、なぜ日本や韓国にもオフィスを開設しているのか。
エンジニアのレベルに関していえば、シリコンバレーが飛び抜けているわけではない。グーグルやフェイスブックの出身者でも、能力的に「それほどでもないな」と感じることはある。だが給与はとても高い。一方で、能力の高いエンジニアは世界中にいて、「グローバルタレントウォーズ」(世界規模の人材争奪)が起きている。当社の競争力のひとつは、シリコンバレーの外に人材をもつ点にある。日本をはじめとするアジアのエンジニアのレベルは高いが、シリコンバレーに比べればコストは低く、競争力がある。
──日本からグローバル市場で戦えるIT企業は生まれると思うか。
企業を大きく成長させるには、必要なときにビジネスをアクセラレート(加速)できなければいけない。シリコンバレーにはキャッシュフローが赤字でも、事業拡大の可能性を評価して、積極的に出資する投資家がいる。当社もまだ利益を出してはいないが、1500万ドルの資金を調達できた。日本では短期の黒字化が重視されるので、こうした資金調達は難しいだろう。
ソフトウェアの世界では「コモディティ化」する分野が有望だ。「コモディティ化」には悪いイメージがあるかもしれないが、ITでは利用者が爆発的に増え、一般的になるほど、そのサービスは収益を生む。ビッグデータはまさにそのタイミングにあり、当社はこの分野で先頭グループにいる。
現在、ITサービスの中心はシリコンバレーにある。当社もまだ途上にあるが、その中に入り込むことが成功への近道になるのではないか。
芳川裕誠(よしかわ・ひろのぶ)
1978年、東京都生まれ。早稲田大学在学中から米レッドハットに勤務。2009年三井物産のプライベートエクイティ事業「三井ベンチャーズ」のメンバーとして渡米。11年に米国シリコンバレーで、太田一樹、古橋貞之と3人で起業した。