“中小企業のおやじ”経営から脱却

社長に就任した俊宏氏は1959年生まれ。83年に東京理科大学理工学研究科修了後、日本電装(現デンソー)に入社。米国駐在などを経験し、11年後の94年にスズキに入社。この入社には母親の意向が強く働いたそうだ。

入社後は主に技術・生産畑を歩んだが、創業家出身ということで、早くから将来の社長候補と目され、先輩らから「俊ちゃん」とかわいがられながらも厳しく鍛えられた。その後、03年取締役、06年に専務、11年に副社長に昇格した。

俊宏氏は酒が飲めず、非常にまじめな性格というのがもっぱらの評判だが、非常に頑固なところがあるそうで、取締役時代には役員会で「会長、それは違いますよ」と修氏に食ってかかることもあったという。

「仕事では父親という見方をしてこなかった。一経営者として着眼点や姿勢を学んだ。一世代離れているから、なんでこんな考え方をするのだろうと思うこともあった」

こう話す俊宏氏が最も強調したのが、“中小企業のおやじ”依存からの脱却だ。今後は若い社員の意見を吸い上げ、全社員が「チームスズキ」となって組織的に経営を進めていくという。

そして、社是の第一に掲げる「消費者(お客様)の立場になって価値ある製品を作ろう」の原点に立ち返り、事業基盤を強化すると同時に7つの課題に取り組んでいく方針だ。その7つとは、(1)お客様の安全、安心のための品質管理体制の構築、(2)二輪車事業の赤字体質からの脱却、(3)日本、インドに次ぐ柱の育成、(4)販売力、サービス力の強化、(5)新技術への対応(環境、安全、通信、電動化など)、(6)スズキブランドの向上、(7)グローバル経営を支えるグループ人材の育成だ。

「私は30年後に比較される経営者になりたい。ただ、30年間社長をするのはスズキにとってよくない。なるべく早く若い人にバトンを渡すため、積極的に人材を育成する。挑戦できる機会をいただいたと感謝している」と俊宏氏。

37年間に及んだ“中小企業のおやじ”経営の歴史に幕が下り、俊宏氏の“チームスズキ”経営の新たな幕が上がった。まずは5年後の2019年度に売上高を2014年度比2割強増の3兆7000億円、販売台数を同2割弱増の350万台を目指す。

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