例題の主人公のように、問題や課題に直面したとき、単にデータを集めてグラフ化しただけでは、次に何をどうすべきか見えてきません。それでは数字を羅列したにすぎず、何らかの意味を見出すことが難しいからです。

例題のような場面でまず行うとよいのは、いろいろな大きさのあるデータの平均を計算し、ざっくり1つにまとめてしまうことです。細かいことは後に置いて、バラバラなデータを一つの値に集約し「この問題はどのくらいの大きさなのか」をつかむのです。ここでのキーワードは「ざっくり」です。

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図A、B

ご存じの通り、平均とは「合計値を個数で割ったもの」です。A(図参照)は200件のデータを棒グラフにして並べたものです。この棒の面積の合計は、「平均値×個数」で求めることもできます。長方形のB(図参照)の面積そのものがそれを示しています。この2つの図を比べても、平均値を使うことで問題を簡略化して把握できることを実感いただけるでしょう。

データ数が多ければ多いほど、全体を把握するのは困難になります。しかし平均というツールを使って一つの数字にまとめれば、問題の大きさがどのくらいかをシンプルに見せることができます。そうすれば自ずと関係者の間で問題の大きさについて、定量的に認識が共有されます。問題解決の出発点は関係者で共通認識を持つことですから、平均の活用は議論の前提を整理するうえで有効なツールといえます。

ただし、平均の活用にはいくつか注意すべき点があります。これは次ページで見ていくことにします。