いちばん危険なのは「警告」の当日

ただ、注意しなければいけないのは、警察を訪ねて漫然とストーカー被害の相談を持ちかけても、「様子を見ましょう」などといわれ、いちばん楽観的な方法を選択させられるケースが少なくないということです。

そうならないためにも、警察には必ず被害者本人(娘さん)を同行させましょう。たとえ娘さんへの付きまとい行為があっても、それに対する本人の恐怖心や名誉毀損がなければ法律には抵触しません。相手に恐怖を感じ迷惑を被っているという本人の証言が必要です。

また、相手にはっきり「別れたい」「付きまとうな」と伝えたメール記録なども証拠として不可欠です。これがないと「まだ向こうも付き合っているつもりかもしれないから、ストーカー行為にはならない」と警察に判断される可能性があります。

警察に行ったら、きちんと「被害届を出す」「告訴する」と伝えましょう。あわせて、警察が動きやすいように証拠を用意しておくことが大事です。ストーカー被害の経緯を整理して文章にしたものと、ストーカーと娘さんとのメールなどのやりとりをすべてプリントして持っていきます。そして供述調書の「刑事手続きをとる」の欄に必ずチェックを入れる。ここまですれば、逮捕は無理でも少なくとも正式な文書による警告が手渡しで出されます。

しかし、安心してはいけません。警告当日が最も危険だからです。当日は警察に加害者の位置情報を確認してもらう、家に見張りをつけてもらうといった対策をとるべきです。最悪の事態を見越して、ホテルや親族宅などの避難場所を確保しておくのも一つの方法です。

最近、こういうことがありました。関西在住の男から「殺す」というメールを受け取り、あわてて地元警察に駆け込んだ神奈川県の女性。警察がすぐ相手の位置情報を確認したところ、男はなんとナイフを何本も所持してはるばる女性宅の近くまで来ていました。ストーカーは思いもよらない行動力を示します。決して楽観してはいけません。

ハラスメントカウンセラー、ゲシュタルト・セラピスト
小早川明子
(こばやかわ・あきこ)
ストーカー対策組織・NPOヒューマニティ理事長。大学などのほか警察学校「DV/ストーカー教養専科」でも講義を持つ。著書『あなたがストーカーになる日』。
(構成=野崎稚恵 撮影=永井 浩)
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