「怒ってしまう自分」を責めすぎる親

(2)折れない心を育てるために、怒る

さて、それでは何も言わない方がいいのかというと、それも違います。

例えば、子育ての過程においては、「怒る」という場面があると思います。何度も同じことを言っても聞いてもらえないのですから、親といえども人間、当然腹が立ちます。

一般的には怒らない方がいいと言われているし、親の側の精神衛生上も怒らない方が楽です。「怒らない子育て」は理想的ではあります。中には、そういう親御さんも、いないことはありません。

しかし、人間は感情の生き物。

怒らないで済むならそれに越したことはないですが、「分かっていたのについ怒ってしまう」というのが、大多数の親の本音ではないでしょうか。子どもは、親を苛立たせることにおいて、天才的です。

人が怒っている姿は、正直、傍目にはいささかみっともないものです。怒った後に激しい自己嫌悪に陥る人もいます。しかし、実は怒るという行為の是非も、考え方次第です。

本気で怒られる経験というのは、実社会において有用かつ必要です。実際、世の中に出たら、怒られまくることばかりです。社会人1年目で褒められまくって楽しくて仕方ないという話は、ほとんど聞いたことがありません。

カウンセリングマインドを身に付けているような上司に当たる確率は、宝くじが当たるのと同じぐらい低いものです。ねちねち言われるか、はたまたドカンと怒られるのが普通です。問題は、優しく優しく育てられてきたために、怒られ慣れておらず、上司のちょっとした注意にも立ち直れなくなってしまう新社会人の側です。

我が子がこうなってしまうことの方がよほど問題です。上司を優しい人へ変容させるよう教育することは難しいですが、我が子を子ども時代に打たれ強く教育しておくことは、できます。そう考えると、時にものすごく怒ることにも、大きな意義があります。

また、これは笑い話ですが、学校において、「超怖い」という噂の先生の後にやる担任は、割と学級経営がやりやすい傾向にあります。かなり感情的になって怒ってしまった時も、ふてくされたり凹んだりしません。なぜかと聞いたら、「(前任の)○○先生はもっと怖かったから大丈夫」とのことでした……。

そう考えると、家庭で子どもに「怒られることへの耐性」をつけておくことには、価値があります。栄養分と同じで、不足しても多過ぎてもバランスが悪く、成長を阻害します。

大切なことは、つい怒ってしまう自分を責めすぎないことです。「また怒っちゃった」と悩み、落ち込むあなたは、他の多くの親御さんと同じであり、極めて正常です。次の日の朝から、もう一度やり直せばいいだけの話です。怒るという行為自体に是非はなく、程度の問題であるとゆったり割り切るのがよいでしょう。