橋下氏には、EQが決定的に足りなかった
橋下維新の失敗という観点からいえば、当人の人間性の問題を指摘せざるをえない。
石原慎太郎氏は都知事時代に、「都は一つでいい」と大阪都構想にケチをつけたことがある。そもそも明治天皇は京都の名前を残したくて、東の京都、「東京都」と命名したのである。都の本家はあくまで京都なのだ。カチンときた私は橋下市長に「大阪と京都は合併して、『京都』もしくは『本京都』と名乗ればいい」と冗談半分に言ったのだが、返ってきた言葉が橋下市長らしかった。「僕、京都(の知事? 市長?)は嫌いなんです」。好き嫌い、敵味方で人を分ける。だから無駄に敵をつくってしまう。弁護士という職業柄もあるのだろう。
人をその気にさせて集団を動かすリーダーシップはIQではなくEQ(心の知能指数)が問われる。好きも嫌いも、味方も敵も全部巻き込んで、包んでしまうような人間力といってもいい。しかし弁護士などの士ビジネスの人種は、組織を動かした経験が少ないから、その手のリーダーシップに難点があることが少なくない。
「言うことを聞かないと対抗馬を立てるぞ」というやり方が人を従わせるときの常套手段。橋下人気が高いときは「次の選挙で睨まれたら怖い」と大勢ついてきたが、いったん下り坂になると橋下離れが加速する。脅して付き従わせてきたから、「この人についていこう」という気にならないのだ。「橋下維新の余命は長くない」と見切られてからは、維新傘下の市議会議員までサボタージュに回って、橋下市長が大いに進めていた市バスや地下鉄の黒字化・民営化策なども動かなくなってしまった。