中央集権を打破する改革者だと大いに期待した

政令指定都市の大阪市を廃止して5つの特別区に分割する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が5月17日に行われた。結果は反対70万5585に対して賛成69万4844。僅差(約1万票差)で反対が上回って、大阪市の存続が決まった。橋下徹市長が府知事時代から提唱し、自ら市長に転じてまで地均しをしてきた大阪都構想。地元からNOを突き付けられた投票結果を橋下市長は「負けは負け。説明しきれなかった自分自身の力不足」と総括、かねてから公言していた通り、任期終了後の政界引退を表明した。

大阪都構想否決を受け、政界引退を表明する橋下氏(2015年5月17日撮影)。(写真=AFLO)

3年前にプレジデント誌で対談したことがあるが、「日本の中央集権体制を変えるには統治機構を改革するしかない。まず大阪の統治機構から変えたい」と熱っぽく語る橋下市長に私は賛同し、期待していた。学生時代から私の本を相当に読み込んでいたようで、私が提言してきた「道州制」や「平成維新」に対する理解も深かった。大阪維新の会を立ち上げるときに、「『維新』を使わせてください」と仁義を切られて、元祖維新屋としては喜んで快諾した。

日本の活力を奪っている諸悪の根源は中央集権であり、これを打破するには統治システムの変革、すなわち道州制への移行が不可欠、というのが道州制論者である私の基本的な考え方だ。しかし、日本の中央集権は堅牢でなまなかでは突き崩せない。そこで橋下市長のような戦国大名が地方から中央に刃を突き付けて緊張感を与えて、変革を促していく。大阪都を筆頭にそれぞれに力を蓄えた“変人首長”率いる地方が連携して中央に変革を迫れば、大政奉還のような形で道州制や連邦制へ移行するチャンスがやってくるのではないか。かつて月刊誌『文藝春秋』で「新薩長連合」を唱えて何人かの首長と連携して自ら東京都知事選に打って出て(青島幸男氏に)惨敗した私は、橋下市長こそがその志を実現してくれる人物だ、と応援してきた。

「大阪都構想をピカピカに磨き上げることが何より大切」と私は再三アドバイスしてきたつもりだ。にもかかわらず、維新人気の高揚感もあったのだろう、橋下市長は石原慎太郎氏と組んで上洛、国政に歩を進めてしまった。