4 ジジ殺し なぜ、ダメな上司を立てるのか

青年局で上司だったのが組織運動本部長の竹下亘衆議院議員。ある会合で進次郎はこんなことを言った。

「竹下登先生に『組織しながら選挙する。選挙しながら組織する』『汗は自分でかきましょう。手柄は他人にあげましょう』という名言があります。僕もそういうことができる政治家を目指しているんです」

事前に竹下登のことを徹底的に調べ上げ「これは!」という一節を覚え、弟の亘議員をしっかりと立てるわけだ。

選挙演説でこんなこともあった。「地方創生担当政務官の小泉進次郎です」と言う際に、必ず「石破茂大臣の下で」という一言を付け加える。さらに、「何か提案するときも石破大臣は、『じゃあやってみて』と非常に仕事がやりやすい上司なのです」と言う。これで人々の頭の中には、今ではすっかり影の薄くなった石破氏がインプットされるというわけだ。自分の言葉がどれだけメディアに乗り伝えられるかを理解しているから、上司を立てつつも自分の存在感を示すことになる。

先輩や上司との付き合い方で、こんな優れたテクニックも用いる。党の重鎮である大島理森衆議院議員に、「先輩、何かいい本ありませんか」「おまえにはこれを勧めるよ」、とそんなやり取りがある。次に会ったときには自然と意見交換をし、違う相談まで持ちかけられるようになる。大物議員にしても教えを請われれば気分がいい。「先日、進次郎が僕のところに来て、何かいい本はないかと言うからあの本を渡したんだ」と地元で言えば、大いに受ける。これは究極のジジ殺しだ。

ビジネスの世界でも、先輩にいきなり「あの会社の営業の仕方を教えてください」と、個別具体的な依頼をしても難しい。そこで、進次郎にならって本を媒介にしてプライドをくすぐることで人間関係をつくり、そこから相談やお願い事などの各論に入ってはどうだろうか。うまくいく可能性はグッと高まるはずだ。