中小企業でもITが欠かせない
地域産業の主役である中小企業の競争相手は日本国内にはとどまりません。中国や新興国などの市場拡大にともない、アジア諸国の工業力の台頭があり、国際間でのコスト競争による海外シフトもおこなわれているのが現状です。そんなグローバルマーケットで競争力をもつためには、やはり「信頼性」のある技術力の確立、飛躍的な向上が必要ではないでしょうか。そして、それを実現するためには、先に述べた人材の確保と高度化のほか、ITを活用した国際化への対応、生産の最適化・効率化の追求が解決策となると思います。
情報技術の発展は著しく携帯電話の世帯保有率は既に90%超となっています。スマートフォンやタブレット端末も、この3年間で急速に普及していますし、これに伴う消費者の行動も、店頭販売からネット販売へと変化しつつあり、個人向けのeコマース市場も拡大傾向にあります。
しかしながら、中小企業では、この機会を容易には活かせていないようです。ホームページの開設は約80%に及びますが、自社サイトでの製品販売・予約受付までとなると20%に満たないようです。生命保険の販売もインターネット・テレビなどでの通信販売は、まだ10%にも満たないのですが、今後、加入する際に希望する販売経路を問うと、倍の20%弱の方が通信販売を希望されますので、業態や商品差はありますが今後成長が見込まれる販売経路であることは間違いありません。
さらに中小企業のあり方を大きく変えると考えられるのが、「インダストリー4.0」の第4次産業革命です。人工知能やITの技術を組み合わせて、工場間や販売店、消費者までを結ぶバーチャルなネットワークを作り上げ、情報をリアルタイムに共有化し、高度な自動化を目指すというものです。このIoT(Internet of Things)でいろいろなモノがネットにつながり、コストダウンや生産性向上などの競争力強化につながると、生産や販売の在り方が変わり人の働き方も変わってくる可能性があると考えられるのです。
蒸気機関の発明による機械化の「第1次」、電気エネルギーによる大量生産の「第2次」、コンピューターによる自動化の「第3次」といった過去3回の産業革命のように、産業構造を根底から覆すかもしれません。今がまさに動き出すタイミングで、変化することから目を背けたままでは現状は変えられません。そこには大企業に限らず中小企業にも商機があるかもしれないのです。
今や世界のトップ企業であるトヨタなどの大企業も町工場からスタートしたことを考えると、ITの活用による中小企業の活性化は、市場における競争を促進し、新しい産業の創出および産業構造の転換の原動力となりうるのではないでしょうか。