今あるものからどんなに足しても、年数が限られた人生、まっとうな発想しか浮かんでこない。積み上げ式は時間がかかりすぎるのです。だから積極的に他社と組む。異質な人や異業種セグメントと一緒にやってみる。すると、思いもつかぬ発想やダイナミズムが生まれ、成し遂げるまでの時間を短縮できるのです。こうした考え方は、1970年代、アメリカでの大学時代に学びました。
組む相手は国内に限りません。ボーダーレスの時代は、グローバルな展開をすべきでしょう。古い習慣や思い込みを後生大事にするのでは、新しい戦いには勝てません。
「私は、事業のど真ん中の、さらにど真ん中を狙っている」
これも昔から言い続けている言葉です。負ける戦いをしないのは当然として、ニッチな仕事で終わってはつまらない。高い志を持ち、考えぬいたビジネスモデルをパートナーとともに進める。そんな同志的結合によってのみ大きな革命ができ、グローバルコンペティションに勝利できるのです。
京都大学経営管理 大学院准教授 曳野 孝氏が解説
孫さんのパートナー選びは個人的つながりが影響しているように見えます。人間関係で選ぶのは一見、非合理的ですが、信頼で結ばれた関係は裏切られない、つまりローリスクだという判断が働いているはずです。興味深いのは、バークレーで学んだ孫さんがシリコンバレーではなく日本で起業したこと。自分と同じ感性を持った仲間は、同時にライバルにもなる。日本のほうが自分を差別化できると考えたのかもしれません。
●正解【A】――相手の条件が厳しいほど、小手先では通じないから
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。