山本一郎さんの回答
「道州制」の大嵐でダメ公務員は「人材のごみ箱」へ
今後15年ぐらいで、地方公務員改革が大きく進むとみています。そのとき厳しい判断を迫られるのが、いま50歳ぐらいの方だと思います。
日本の公務員の総人件費(GDP比)は、OECD諸国と比べて、多いわけではありません。それは本来、公務員のやるべき公共サービスを様々な形で民間委託してきたからです。ところが民生委員や児童委員などをはじめ、担い手がいなくなっている。日本は人口集中地域と過疎地域の隔たりが大きいのですが、特に過疎地域では公共サービスが十分に提供できなくなりつつあります。さらに今後、東京のような都市部でも少子高齢化が急速に進むため、自治体の負担はさらに重くなる。
注意すべきなのは、どの自治体も横一線で深刻な状況にある点です。現在は夕張市だけが特殊な事例のように受け止められていますが、どこも将来の展望は暗い。まだ干上がっていないだけなのです。これが一斉に破綻に追い込まれる恐れがある。
地方自治体の財政破綻が続出すれば、夕張市を支援している東京都のように「受け皿自治体」が必要になります。それは「後ろ向きの道州制」ともいえるでしょう。身動きがとれない自治体を地方ごとに寄せ集めて、人材のごみ箱をつくる。そうした場所に押し込められた場合、地方公務員の資格が剥奪され、リストラの対象になることもあるのではないでしょうか。定年の繰り上げや退職金の切り下げなども起こるはずです。「そんなことは許されない」と反対しても、ない袖は振れません。公務員だから安定した人生を全うできるとは限らなくなると予想します。
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年イレギュラーズアンドパートナーズを設立。著書に『リーダーの値打ち』『情報革命バブルの崩壊』などがある。ブロガーとしても著名。