──今後の海外展開を考えるとき、インド市場は魅力がありそうに見える。
【木股】そうだ。インドネシアをはじめアジア地域は農業機械化率がそんなに高くないが、インドは非常に高い。たとえばトラクターだと、日本の年間販売台数5万台に対し、インドは70万台に達している。ところが、現在のクボタのシェアは1%もない。米作とか畑作とか限られた用途の機械しか出していないからで、もっと多目的な使い方ができる機械を出して、インド市場のシェアを上げていきたい。そのために、現地に研究所をつくるだけでなく、いずれ工場も建設したいと思っている。
──製造現場を長く歩かれてきた木股社長にとって、大野耐一さんの『トヨタ生産方式』が感銘を受けた本だと聞いている。
【木股】実際に大野さんに教えを受けたことはないが、彼の愛弟子の方に10年間ほど指導を受けた。私が感銘を受けたのは仕事に対する考え方で、あるとき、こんなやり取りがあった。私が「この現場は汚い。整理整頓がまだまだ駄目です」と言うと、バシッとこう指摘された。「現場はあなたを映す鏡ですよ。あなたの心が汚れているから、こんな汚い現場になるんです。現場のせいにしてはいけません」と。本当にいろいろなことを教えてもらったが、クボタの中でその精神を生かしていければと思っている。
1951年、岐阜県生まれ。77年北海道大学工学部卒業後、久保田鉄工(現クボタ)入社。常務取締役、取締役専務執行役員などを経て、2014年代表取締役副社長執行役員。前社長の急逝で同年7月より現職。