2009年度の機械業界の経常利益は前期比約60%減となり、08年度の約50%減に続いて2期連続の落ち込みになる見通し。昨年9月のリーマンショック以降、急低下した受注高は2~3月以降若干持ち直してきたが、主力ユーザーである自動車や電機各社の設備稼働率は5~6割で依然として低く、本格的な回復に至っていない。

中期的にも過剰生産能力の解消には時間がかかりそうで、筆者は日米欧の先進国を中心に設備投資の回復ピッチが鈍くなると見ている。半面、中国やインドなどの新興国は生産能力を増強する余地が大きく、機械の付加価値を高めるニーズもあり、相対的に堅調な受注回復が見られそうだ。

今後に懸念されるのは、日米欧に加えてアジアなど世界中の競合企業が中国など新興国に一斉に押し寄せて、収益性が低下するリスク。こうした環境下においては、日本企業も従来と発想を変える必要が出てくるであろう。

建設機械の国内最大手コマツは、最も技術的に進んだハイブリッド式油圧ショベルで、今期に中国で500台の販売(世界全体は700台)を目指す。来期以降もハイブリッドタイプの新製品を拡充し、従来タイプに比べて約5割高い価格設定も見直す可能性が大きい。

従来、中国は先進国で販売した1~2世代前の旧モデル中心でも売上高営業利益率2割前後と高い収益性を維持できていた。日本製の建設機械が耐久性や信頼性で優れていたのが大きな理由である。ただ、今後はそうした戦略では中国で競争に勝ち、高い収益性を確保するのは難しくなる可能性が大きい。

中国の建設機械ユーザーは日本に比べて年間の稼働時間が2~3倍と長く、ハイブリッド建機の特徴である燃料費低減のメリットを世界で最も享受しやすい。コマツは技術的にも世界で先行するハイブリッド建機の拡販をはかり、先行者利益を取る考えだ。

普及率が低いという観点では、中国などのアジア諸国はトラクターやコンバインなど農業機械の拡大余地が大きい。中国は米や小麦の生産量が世界トップにもかかわらず、農業の機械化が遅れている。ここ数年は工業化に加え中国政府の農機への補助金が急速に伸びており、クボタのアジア向け内燃機器関連に好影響を与えよう。