外国人労働者削減のシンガポール

──日本以外の国にはどういう特徴があるか。

【ロバート・ウォルターズ】なかなか一般論化しにくいというのが正直なところだ。あえて、特定の国や地域の特性を決める3大要素を挙げるとすれば、国柄、仕事に対する倫理観、そして様々な規制に代表される法的な枠組みということができよう。

たとえば、イギリス人は勤勉な国民だといわれる。国を挙げてワーク・ライフ・バランスの推進を掲げ、柔軟な働き方ができるよう法整備を進めてきた。転職マーケットも大きく、現在は地方企業の雇用も活性化している。

一方、フランスは、国民性として、労働よりも余暇に大きな価値を見出すことがよく指摘される。そのためか、人々が仕事を探すに当たって保守性が顕著に表れる傾向がある。よって、非常に柔軟性のない市場になっている。

アジアに目を転じてシンガポールの転職市場を見ると、以前は法規制が少なく、マーケットの動きも活発だった。けれども、数年前から労働力に占める外国人の割合が全体の3分の1を超えないようにするという基本政策を進めた。それによって、柔軟性が低くなってしまった。

──そうしたなか、日本人がグローバルに活躍するうえで何が必要になってくるのか。

【ロバート・ウォルターズ】いまの20代を中心とした若い層は、自分たちの親を見てきて、会社におんぶに抱っこではもう成り立たないことを知っている。自分自身が企業戦士となって、会社のために奴隷のように働くのはごめんだと思っているのかもしれない。

また、若い起業家も格段に増えた。かつての日本では、生涯1社に勤め続けることが当たり前だった。その会社において、30代でキャリアを形成し、40代で足元をしっかり固めるのが理想とされてきたが、そこから外れると、何らかのテコ入れ策を考えなければいけなかった。だが、それは過去の話となり、自分の足で立とうとする若い層が増えていった。

当社を利用する20代、30代は、自分が勤める会社を冷静に、客観的に捉える傾向がある。転職先を選ぶ際、その企業がどのようなCSRの取り組みをしているかにも敏感だ。理想的なキャリアを歩むには、その会社に何年勤めればいいかを念頭に置き、会社を選択する人も多い。

これは世界でも同じ。こうした状況下で日本人ビジネスマンが活躍するには、まず自分たちが持っているコアとなる価値観、すなわち、強固な倫理性を大切にすべきだろう。

ロバート・ウォルターズCEO ロバート・ウォルターズ
1975年政治経済学位を取得後、トウシュ・ロス会計事務所、イギリス人材紹介会社大手マイケル・ペイジ・インターナショナル社を経て、85年にロバート・ウォルターズ社をイギリス・ロンドンにて設立。現在、世界24カ国で展開。日本では2カ国語以上の語学力を持つグローバル人材に特化した人材紹介サービスを提供している。
(岡村繁雄=構成 的野弘路=撮影)
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