覚えることそのものを目的にするな

【岩波】この本では、最初はイラスト(チェイン)を見ながら、次はイラストを描く、最後は頭でイメージというように、だんだんレベルが上がっていきます。ところで、記憶力のトレーニングをするときに、注意したほうがいいことって、あるんでしょうか?

【池谷】うーん、やっぱり「覚えることそのものが目的になってしまう」のは最悪ですね。円周率コンテストを否定するつもりはありませんが、たくさん覚えることにあまり意味はない。だって、円周率は電卓に入っていますから。さすがに10万桁は入っていないかもしれないけれど、普通に生きていくうえでは、そんなには必要ない。なので、まずは目的と手段が本末転倒にならないように気をつけたいですね。

あとは、似たようなリンク(つながり)で覚えて、それがクセになってしまうのはどうかと思いますね。たとえば、佐藤さんを覚えるときに必ず俳優の佐藤浩市とくっつけたりしていると、全部同じになってしまう。もっと臨機応変で、マンネリ化しない方法があれば、メソッドとして、より懐は深いのかなと。

【岩波】この本のトレーニングを通じて、単純なゴロ合わせだけではなく、より幅の広いチェインがつくれるようになっていただけたら。最終的には、自分の過去の経験などを含めた、クリエイティブなチェインをつくれるようになれば、より実用性の高い記憶力が得られると考えています。