意外な名作『ゴルゴ13』の見どころ

高倉健ファンにとって『ゴルゴ13』の見どころはふたつあると思われる。ひとつは彼が天井からロープで吊るされてイラン人の悪漢に拷問されるシーンだ。イランの俳優にとっては高倉健は有名であっても、ひとりの日本人俳優である。「殴れ」と言われたら、手加減しない。日本の映画俳優はあれほど無慈悲に高倉健をビシビシ鞭打つことはできないだろう。ほんとうに痛がっている高倉健の顔を見たければ、『ゴルゴ13』しかない。

次は最後のアクションシーンである。地雷原のなかを高倉健が運転するベンツが走り抜けていく。傍らでは地雷が次々と爆発していく。CGではない。本物の爆発である。

ハリウッド映画に比べてしまえば、ちゃちな感は否めないけれど、あれほど地雷がバンバン爆発する現場を体験できた日本人俳優は高倉健ぐらいではないか。

イラン映画の話が出たのは『鉄道員 ぽっぽや』の公開後である。

「次に何をやるか」という趣旨のインタビューを申し込んだところ、1時間半のうち、1時間はイランとイラン映画の話だった。

「ハリウッド映画にとってアメリカの次に大きなマーケットは日本です。作品が公開されるたびに俳優も監督も日本へやってくるでしょう。日本のマーケットが大きいことがよくわかっているんですよ、彼らには。

ハリウッドは日本では何が当たるかをマーケティングし、その計算どおりに映画を作る。もちろん金もかける。CGもSFXも使う。それが彼らの映画の作り方です。でも、それほど頭のいい彼らでさえも作らない映画があるんです」

ハリウッドが作らない映画の筆頭として高倉健が挙げたのがイランのマジッド・マジディ監督の作品『運動靴と赤い金魚』(1997年)。同監督の作品には『太陽は、ぼくの瞳』(1999年)、『少女の髪どめ』(2001年)などがあり、この3作はモントリオール世界映画祭でいずれもグランプリとなっている。同国の実力派監督だ。